前回のブログでは川端プラスチックにお邪魔してmornin’の樹脂部品の作り方を紹介させていただきました。今回は代表の川端社長にいろいろとお話をお伺いしたいと思います。町工場が激減していく一方で、Makerムーブメントというものづくりの新たな波が訪れる中、射出成形屋さんはどんな思いでものづくりをしているのでしょうか。
- 高橋:いつも大変お世話になってます。まずお伺いしたいのですが、普段どんな流れで受注から納品まで行っているのでしょうか?mornin’のときには細かい仕様決めまでお世話になってしまったので、ロビットは普段よりも手を焼いた面倒な客だったのでは・・・?
川端社長:そんなことはありません!うちは「こんなものをつくりたい」というざっくりとした要望をいただいて、そこから細かい部分を一緒に詰めていくような案件が多いです。
例えば屋外で使う製品なら紫外線に強い樹脂をおすすめしたり、金型のゲート(樹脂が流れ込んでくる入り口)の位置を考慮して設計にアドバイスしたりなど、成形屋さんは設計段階からいろいろと力になれることが多いです。
仕様が固まった後は、金型屋さんとの打ち合わせに入ります。金型が完成したら試作品を射出成形し、クライアントにレビューしていただく。
その結果を踏まえて再度金型や成形具合を調整して再度成形。そのテストアンドトライを繰り返して品質を高めていき、最終的に量産に移る。これが一連の流れになります。
- 高橋:そういっていただけるとありがたいです。一般的に、金型屋さんは依頼する側が予め見つけておくものなのでしょうか?
川端社長:その必要はありません。うちに限ったことでは無いですが、お願いする金型屋さんは昔から付き合いがあるところに限定させてもらってます。
信頼できないところとだと不具合がある場合に責任のなすり付けでトラブルになりがちですし、金型が良くないものだと成形時のコストが割高になってしまいます。
スピード感を持って良いものを仕上げるためだけでなく、クライアントの費用負担を軽くするという意味でも、金型屋さんの選定ややりとりは是非成形屋さんにお任せください。
(有)川端プラスチック 代表取締役 川端正雄さん
- 高橋:川端社長とお仕事をしていると「依頼する」というより「一緒に作っている」という気持ちになるくらい、本当にいろいろ手を焼いてくれてありがたいことばかりです。量産を視野に入れてものづくりしている人は、早めに成形屋さんに相談すべきですね!実際いろいろと相談を受けることが多いと思いますが、普段はどんな案件が多いのでしょうか?
川端社長:いわゆる”緊張する案件”が多いですね。うちは所持する成型機が2台と規模が小さいため、成型機を10~20台もっているようなところよりも管理がしやすく、ごみなどが入りにくいという特徴があります。
一般的に我々成形屋さんが受ける仕事は雑貨品の割合が多いのですが、うちは医療関係や食品関係といった衛生周りに気を使う仕事をいただくことが多いです。
- 高橋:なかなか難易度が高そうですね。いろいろな案件をこなす中で、どんな失敗や成功がありましたか?
川端社長:正直、成功というのはなかなか思い当たりません。失敗しないのが当たり前の業界だからです。大失敗の例としてはリコールのような事態が考えられますが、幸いこれまでそういった事態はありませんね・・。
ただ強いて挙げるとすれば、周りの町工場がどんどん潰れていく中で20年間これまで続けられていることは成功しているといっていい点だと思います。
中国やベトナム、インドネシアに国内の仕事が流れ始めてから、町工場の数は本当に減りました。賃金形態が違う国とじゃ競争にならないですからね。
そんな中で現在も生き残っている町工場は、全て成功した部類に入るんじゃないかな。
- 高橋:そうなんですね。成功の要因と言いますか、潰れていってしまった町工場と生き残ってる町工場にはどんな違いがあったと思いますか?
川端社長:潰れてしまった町工場より秀でた技術を持っていた、というのが理由で生き残ったところって、意外と多くないですね。
人員を増やしたり、設備を増設したりで拡大していった結果、時代の変化に対応しづらくなったという町工場が次々と潰れていきました。
そんな中、先々で起こりうる不測の事態に備えられるよう慎重に動いていた町工場が生き残っているように感じます。私も父の仕事のスタンスを見習ったからこそ今があるのだと思います。
- 高橋:川端プラスチックさんは、もともとはお父様が営んでいた工場なんですよね。どんな経緯で継がれたのですか?
川端社長:はい。20年前に父は引退したのですが、同時に工場を畳むつもりでした。年齢や体調などの理由もありますが、仕事が減ってきているという面もありました。
その頃私は機械商社に勤めていたのですが、ぬるま湯に浸かっているようなつまらなさ、そのままそこに居続けてしまうことへの危機感を感じていました。
そこで父が引退するという話を聞いて、それならば自分がと思ったわけです。子供の頃から父の仕事を見ている自分ならやれるかもしれないし、道具も揃っていますし。
もちろん父は大反対でしたが、母の応援もあって押し切ることができました。
ただ、最初の1年は仕事が無い状態が続きましたね。前職のつながりを活かして一生懸命営業活動をして、やっと仕事をもらい始めることができました。
その後もしばらくは本当に泥臭くて、深夜の2~3時まで奥さんと一緒に樹脂の仕上げ作業をして、翌日も早朝から仕事してという毎日で。
正直、こんなことがいつまで続くのだろうかと不安で仕方なかったですし、当時はまったく先が見えませんでした。
ですが、そんな中で頑張り続けたからこそ、仕事を紹介してくれるようなつながりをたくさん作ることができたのだと思います。
- 高橋:多くの苦労があったのですね・・。大企業との競争ももちろんあったかと思いますが、川端プラスチックさんのような町工場はどんな点が大手より優れていると思いますか?
川端社長:大企業は資金力も開発能力もすごい。敵うところは本当に少ないかもしれませんが、お客様との仲間意識は大企業より強いと感じます。月曜に納品させたいということなら土日も働いてなんとかして協力してあげようという気概を持っている人が多いです。
また、意思決定までのスピード感も勝っていると思います。決定フローが全く違うということもありますが、費用対効果よりも「なんとかしてあげよう」という思いが強いから踏み込んでいける、そういった仲間意識の強さがスピード感を生んでいるのかなと。
また最近私は、ロビットのような頑張っている若い会社を成功させていくことにやりがいを感じています。歳も歳だからかもしれませんが、これまでたくさんのつながりの中で助けてもらったので。
町工場は自社だけじゃ仕事が完結しないので、常に助け合いです。そんな環境だからこそ、なんとかしてあげたいという仲間意識が芽生えるのかと思います。
- 高橋:大変ありがたいお話をありがとうございます。応援していただけて大変光栄に思います。仰るような仲間意識がなければ、きっとmornin’も形になっていなかったのではと思います!
最後に、数々の苦難を乗り越えてご成功された川端社長から是非、悩める若者へのメッセージをお願いできればと思います。
川端社長:お話した通り、商売を始めた頃は先が見えず、辛くて不安な時期が続いてました。ただそこで苦労したからこそ、今があるとも思います。
おこがましいかもしれないけどなにか言えるとしたら、やっぱり若い時にはどんどん苦労すべき、てことじゃないかな。
将来の自分を助けてくれるものって、昔苦労したときに得られた経験しかありません。今苦労している人は、将来必ず自分の助けになると信じて頑張って欲しいです。
- 高橋:川端社長が仰ると重みが違いますね・・・。今日はお忙しい中お付き合いいただき、ありがとうございました!
創業後の苦労を泥臭く乗り越え、周りと協力しながらたくさんのメーカーを支えてきた川端プラスチック。高品質で信頼性のある工場と評価されつつも、ひたすら謙虚に、そして真摯に仕事と向き合うその姿勢に、同じものづくりの人間として非常に感銘を受けました。
樹脂部品の量産でお悩みの方は是非、川端プラスチックに相談してみてください。
きっとご満足いただけると思います!
有限会社川端プラスチック
代表取締役 川端正雄
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