Robit blog

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mornin’の樹脂部品は町工場の汗と涙で出来ている話

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こんにちは。ロビットの高橋です。みなさん、身の回りにある樹脂(プラスチック)部品がどのように作られているかご存知でしょうか?

 世の中には様々な方法が存在しますが、最もポピュラーな作り方は「射出成形」という方法です。簡単に言うと、金型と呼ばれる金属製の型に溶けた樹脂を流し込み、それを冷やして固めるという方法なのですが、部品の特性や形状に合わせて樹脂を流し込む速度や金型の温度などの絶妙な調整を行う必要があるため、長年の経験やコツが必要とされる非常に奥の深い製法とされています。

 mornin’の樹脂部品も射出成形で作っているのですが、そんな難しい製法はさすがに自分たちの手では行えません。私たちはその道の職人である「有限会社川端プラスチック」さんに製造をお願いしています。江戸川区にてたった2人で営んでいる会社なのですが、高品質、高信頼性が求められる案件を数多く請け負っているプロフェッショナルな町工場です。

mornin’の樹脂部品はそんな職人達の手によって作られているわけですが、今回はその工程を一部、特別にご紹介しようと思います。

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まずは金型をご紹介します。

上の写真はmornin’中央にあるスイッチを作るための金型です。

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この赤丸の部分がスイッチです。取り付けの時に押し込む部品ですね。

この金型をぱかっと割ると、スイッチの形をしたスペースがあらわれます。

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中央の小さい穴から樹脂が流れ込み、左右の部品のスペースに流れ込んでいく仕組みになっています。部品表面部が綺麗に磨かれているように見えるかと思いますが、実は非常に細かい模様が一面に施されています。これは「シボ加工」と呼ばれる方法でして、部品表面に質感を持たせるために、あえてツルツルの面に細かい粒子を吹き付けつけることで模様付けしてあります。世の中の樹脂部品のほとんどがこのシボ加工で模様付けされているので、身の回りの樹脂製品の表面をよく見てみると面白いかもしれません。

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ちなみに、非常に重いです。上から吊るされているフックで巻き上げて持ち上げます。

試しに手で持ち上げてみようとしましたが・・・

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ご覧の通り全力にも関わらず、びくともしませんでした。

この金型、100kgを超えてるとのこと。少し移動させるだけでも一苦労ですね。

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さて、金型というのはあくまで樹脂の受け皿です。樹脂を溶かし、流し込むための装置が別途必要になります。それが上の写真の「射出成形機」と呼ばれる機械です。川端プラスチックさんは最新モデルの射出成形機を二台保有しており、また作業を自動化するためにそれぞれにロボットアームが装着されています。写真中央に見えるのが射出成形機に設置された金型です。

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 アップした写真。こちらの金型は最初にご紹介したものとは別物になります。

mornin’のどの部品が出来上がるのかは後ほど。

 そしてこの金型、面白い秘密が隠されています。

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 なんと、とげが生えてきます。このとげはエジェクタピンとよばれる部品で、出来上がった樹脂部品を取り出す際に押し出す役割をするものです。均一的な押し出し力が部品に加わるよう、このようにたくさん生えるようになっています。エジェクタピンの生え方が悪いと部品をうまく押し出せなかったり、場合によっては部品を傷つけてしまうこともありますので、この設計もまたノウハウのいる作業です。

実はmornin’の一部の金型は川端プラスチックさんと出会う前に他所で用意したものなのですが、その金型のエジェクタピンが上手く動作せず、金型にカジリ(削れ)が生じたことがありました。製造スケジュールやコストの面でかなり厳しい状況だったのですが、川端プラスチックさんは金型自体にも大変知見が深く、また樹脂屋さんや金型屋さんとのつながりも強いので、迅速かつ低コストに対応を行ってくれました。

そして次はいよいよ成形です。射出成形機の写真右上に写っている漏斗(ろうと)状の部分に樹脂を入れると、その樹脂がヒーターにより温められ溶かされます。それが金型の中に注入されて冷やされると樹脂が固まり、金型を開くと・・・

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部品の形状ができあがりです!

非常に分かりづらいと思いますが、カーテンレールに挿入されるローラーです。

 この写真のようにきれいに成形できるようになるまでには、射出成形におけるあらゆるパラメータを最適な値に近づける作業が必要になります。さじ加減ひとつで部品の寸法や強度、表面の光沢やムラなどに変化が生じてしまうので、品質が大きく左右される重要な工程です。川端プラスチックさんはこの工程を私たちの目の前で行ってくれたので、自分たちの目で実際に出来を確かめながら寸法や強度等を調整していくことができました。理想の品質レベルに最短で確実にたどり着ける方法だと思うので、このように立会いながら一緒に調節できるのは大変ありがたかったです。

 また写真を見てお気づきかもしれませんが、実は射出成形した樹脂の上下に、ローラー以外の部品も2個ついています。mornin’のツノに当たる部分ですね。このように一つの金型から複数種類の部品を成形することも可能でして、こういった金型は一般的にファミリー金型と呼ばれています。金型の数を抑えられるのでコスト削減に繋がるのですが、同じ金型でできた部品は同じ種類の樹脂で出来上がるので、部品毎の特性を考慮しつつ組み合わせを考えなければいけません。この工程でも、川端プラスチックさんには大変お世話になりました。

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左がタイヤのホイール、そして右のモーターを囲んでいるのがモーターブラケットと呼んでいる部品でして、これらはひとつのファミリー金型で作られています。前者の部品に強度を持たせる為にガラス繊維を混ぜる必要があったのですが、それにつられて後者の部品も硬さが増してしまい、モーターに圧力がかかりすぎて壊れてしまうといった問題が発生しました。金型に修正を加えることで調整できそうだったのですが、発売予定日に間に合わせる為には時間が足らなさそうで、社内は大混乱・・・。この問題に対して川端プラスチックさんは様々な樹脂を配合比率を変えつつ試すなど、あらゆる解決策を練ってくれました。そして最終的に「切削加工による二次加工で部品の寸法を調整する」という、発売日にも間に合う上に金型の修正費用もかからない最適な方法を提案をしてくれまして、無事に発売を迎えることができました。

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さて、射出成形した直後は、まだ複数の部品が枝でひとつにくっついている状態。プラモデルをつくったことがある方にはみなれた形かもしれません。この山がどんどん出来上がっていくわけですが、ここから先は手作業。ひとつひとつ丁寧に手作業で枝から切り取られていきます。これを何万回も行うわけですから、気の遠くなる作業です。ただこの工程で気をぬくとバリが生じてしまい、製品に異常をもたらす可能性もあります。こういった根気のいる作業に品質が支えられていると思うと、本当に頭があがりません。こうした作業を通してやっと、レールの中をスムーズに動くことができるローラーが完成するのです。

 

まとめ

以上、樹脂部品の製造を紹介しました。所々で苦労したエピソードを挟みましたが、その度に川端プラスチックさんは迅速に対応してくれましたし、またその問題がどうして発生したか、どのように対策すべきか等、親切丁寧に教えてくれました。一緒に樹脂部品を製造している様で安心できましたし、きっと中国で作っていたらこの距離感でやりとりすることはできなかったと思います。

そんな安心と信頼の川端プラスチックさんですが、代表の川端社長には創業してから今に至るまで、様々な苦労があったそうです。町工場が次々と潰れていく中、どのようにして乗り越えたのか。そしてMakerムーブメントという新しい時代をどう考えているのか。次のブログでは、川端社長にいろいろとお話を伺ってみたいと思います。

 

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